読書(佐藤春夫集)
また1冊、30年ほど前に買った本を、読み終わりました。
・詩
読んでみましたが、あまり心に響きませんでした。
残念ながら、文学的な想像力がないのかもしれません。
ノーベル文学賞の解説記事を読みましたが、欧米では、小説よりも
詩を重視する傾向が昔からあるそうで、昨年のボブ・ディランも
そうですが、どうしてもそのような西洋的価値観から選ばれること
が多いようです。村上春樹は好きな作家ですが、ノーベル賞の
選考委員の好みでは、残念ながらないような気がします。
・田園の憂鬱
自己の経験にもとづく話だと思います。
田園(神奈川あたりの東京近郊)へ引き込んだ、精神的に弱っている
主人公の、精神的な遍歴のような話です。これといった出来事もなく、
(自然との対話?)つまらなくはないですが、正直、それほど面白く
もなかったです。
・掬水譚
法然上人と平家を題材にした内容のようですが、むずかしく、
あまり面白くなかったので、途中でリタイヤしました。
・西班牙犬の家
犬を連れて、散歩に出かけたが、不思議な林の中の家にたどり
着きます。西班牙犬(スペイン犬)しかいなかったのですが、
帰りがけに見ると、それは人間に変わっていたのでした。
もうやめようかと思い始めましたが、やっと面白くなってきました。
・女誡扇奇譚
内地人の新聞記者が、台湾(日本統治時です)の廃屋での幽霊
話を体験します。幽霊と思われたのは、幽霊話を利用した、
穀物問屋の使用人(娘)の逢引きでのことでした。
・ F・O・U (狂人という意味らしいです)
パリに絵を描くために来た日本人が、彼の地で心が病み、その
ためか、これ以上はないという品位ある態度で好かれますが、
お金が無くなると情婦にも去られ(日本に妻と幼子を残しています)
最後は、居酒屋の主人の好意で、絵を描くものの、睡眠薬で自死
してしまいます。そして居酒屋の主人たちは遺作展覧会を開くと
いうストーリーです。少し現実離れしている気もしましたが、
面白かったです。
・のんしゃらん記録
未来の世では、下層社会の人間は、何百メートルもの地下の、
日も当たらないところで暮らしています。そして希望すれば
人間が植物に変えられ、日が当たる幸せな(と思われる)生活
を送れるようになるという、SF的作品です。
・小妖静伝
美術部へ入部した、女主人公“O”の物語です。
特に結論があるストーリーではないのですが、主人公がとても
魅力的でした。
大正時代に活躍した作家のようです。
確か、芥川賞の初代選考委員となり、太宰治が、自分が選ばれるよう
手紙で依頼したと記憶しています。記憶違いでしたらすいません。