読書(最終便に間に合えば:林真理子)
いつも珈琲店で読む週刊誌のコラムに書かれていて、興味がわいて、
借りて読んだのだと思います。
全部で5編の作品がのっています。初版は1988年のようです。
どの作品も面白く読みましたが、各作品のラストの方(気に入った)です。
・最終便に間に合えば
そうして美登里は、暗い機内でくすっと満足気な笑いをもたらした。
自分も長原も、なんと意地汚い存在なのであろうか。
・エンジェルのペン
お母さんもずたずたにしちゃったわ。そして生まれて初めてあんなに愛
した人まで。ペン先でみんなを傷つけて、そして私も傷つけて、それ
でも私、書かなきゃいけないの。 ~あたり前だよ。~
夕日が反射して、ペン先も浩子も異様にキラキラと輝いていることに、
緑川はまだ気が付かない。
・てるてる坊主
けれども、邦夫がどんな表情をしているのか、どうしても礼子には想像
できない。邦夫の顔は、あのてるてる坊主のように、ぼんやりとした
ひと筆描きだ。自分は本当は、邦夫のことなど何ひとつ知らないのでは
ないかと礼子はふと思った。
・ワイン
真昼に近い銀座は、古いフィルムのようにあたりがひっそりと背景に
へばりついている。その中で白い服を着て歩く私は滑稽で、そして、
私こそが相手を求めてさまよっている進物のような気がした。
・京都まで
その時だ。久仁子は耳をすませた。遠いどこかで、芝居が終わる拍子木
が聞こえたような気がした。
昨年末に初めて田辺聖子の作品を読みました。こちらも新聞の書評で
(お亡くなりになったからだと思います)知って読んでみました。
今回の林真理子の本を読んで主人公が女性だったり、恋愛がテーマで
主人公の心の動きが書かれていたりと、時代は違いますが類似性を感じ
ました。
林真理子は、そんなに読んだわけではありませんが、このころが一番
作品に輝きがあったような(エッセイは別ですが)気がします。