読書(黙市:津島佑子、路上のジャズ:中上健次)
借りていた本を、読み終わりました。
先日たまたまTVで、津島佑子さん(太宰治の次女)の娘さん(太宰治
の孫)が今年の芥川賞にノミネートされたというニュースを見ました。
①黙市
長編はありません。面白かったものとしては、
・島
住宅地の歴史を書いているだけなのに、面白かったです。
何か大きな秘密があばかれるのか、と思いながらも、結局、
何も起こらないのですが、読み終わって何かしらの満足感が
ありました。
・あの家
家にまつわる話が多いですが、これもそうです。
障害を持つ兄がいて、不倫の末にシングルマザーになっている
主人公ですが、母・娘のために生きることができない自分がいます。
「どうして男に会わずにいられないのだろう。私は自分でも苦痛
を感じていた。誰よりも切実に、母親と子どもはこの自分を
求めているのだ。そのたった二人の人間のために、自分自身の
思いを、なぜ、潔く消し去ることができないのだろう。
たった二人の人間を、自分は充たすことができないのだろう。」
というくだりに、共感しました。
・黙市(だんまりいち)
ほんの題名になっている作品です。六義園が出てくる話で、これも
不倫でシングルマザーが主人公です。作者自身のことなのでしょうか。
・石を割る
万里子という美人と高校で友達になります。そして、最後には、
あんたはきれいだという以外、取り柄がないと悪態をつきます。
(頭の中で石がわれた)
女性同士のむき出しの感情が興味深い作品でした。
②路上のジャズ
こちらも、長編はありません。
・灰色のコカ・コーラ
上京し、浪人生活を送る主人公ですが、新宿のモダン・ジャズ喫茶
に屯する仲間との日常や薬中毒(鎮痛剤など)の生活が描かれて
います。ほとんど自伝だと思いますが、19~23才のころの、
青春の深い苦悩がかかれています。
その他、ジャズに関するエッセイなどもありますが、
作者は、ナベサダやフュージョンが嫌いだった(だろうなと思いました)、
フリージャズは、白人文化に対抗するものととらえていた、
フリージャズはやがて下火になるが、マイルスがビッチェズ・ブルー
でその意思を受け継いだと書かれていたのが、印象的でした。