読書(おらおらでひとりいぐも、東京輪舞)
だいぶ前にリクエストしていた本が2冊来たので早速読んでみました。
おらおらでひとりいぐも=若竹千佐子
主人公の東北弁が素晴らしいです。こんなに方言が心に響く作品は
はじめてです。下宿していたころに、東北出身の先輩後輩が “へば” と
よく言っていたのを思い出しました。個人的には “なして” という表現が
読んでいて良かったです。
最近読んだ、現在活躍中の作者の作品ではダントツに揺さぶられました。
ストーリーは、自立もありますが、主人公の女性が人生を振り返る内容で、
作者も主人公もほぼ同年代のためか共感できました。
老人となった主人公の東北弁にぐっと涙する場面が多かったです。ラストで、小学校3年の孫が遊びに来るのがほろりとするし、
「ママ、興奮すると東北弁になるの」というセリフが、今はうまくいって
なくても娘もやっぱり同じ東北人だと気が付いて思わず涙します。
第158回芥川賞作品ですが、本の巻末を見たら、2017年11月初版
なのに2018年3月でもうすでに54刷増刷になっていました。
作者は主婦で55才から(8年前から)小説講座に通い始め本作を執筆した
というのが驚きです。
東京輪舞=月村了衛
作者はほぼ同年代で、読んでいる自分の人生における大事件を取り上げているので、とてもリアリティーがあり、当時の自分を振り返りながら物語に
入り込んでしまいました。
公安というのはもっと特殊で、ずっと専門職なのかと思ったら、
結構異動もありローカルの警察にも公安経験者がそれなりにいるという
のは意外でした。ある意味こわい気もします。
作者は警察事情にすごく詳しく、読んでいても現実感が圧倒的でした。
時代ごとの事柄(公衆電話やポケベルの使用、東北新幹線乗り入れ、
初期の携帯が地下街でつながらない、阪神淡路大震災、旧都庁舎など)
がさりげなく出て来て納得しながら読んでしまいました。
KGBの女工作員(もちろん驚くほどの美人です)と元妻の警察官との
確執のようなものも花を添えています。
最高に面白い小説でした。